テレビ東京の土曜夜の番組「美の巨人たち」が、十二日で放送四百回を迎える。スタートから丸八年。途中で単独スポンサーが交代するという一大事をも乗り越えて続いてきた秘密は-。
「美の巨人たち」は、国内外の絵画、彫刻、建築物など毎回一つにスポットを当て、制作にまつわる謎や秘話を紹介する三十分番組。「土曜の夜だから、酒でも飲みながら気軽に美術の世界を楽しんでほしかった」と、初代プロデューサーの川幡浩さんはコンセプトを解説する。
そのための工夫が、作者の人生や作品誕生の背景をミニドラマの中で語る「ストーリーテラー」の配置だ。
モディリアーニ作「カリアティッド」を取り上げた先月二十九日の回では、恋人の肖像をかたどった人形が独り言をつぶやき、フェルメール作「恋文」の回(2007年11月)には、外国人俳優演じるラブレター専門の配達人が登場。
建築物の回によく出る全身黒ずくめの「モデュロール兄弟」は「ノイシュバンシュタイン城」(06年9月)を探索し、「銀閣寺」(07年11月)の庭を眺めて政治に絶望した足利義政の心情を思いやる。専門的な解説に、狂言回しが演じるミニドラマを加えることで「単なる美術番組との差別化を図っている」(現プロデューサーの永田浩一さん)。スタート当初から一貫する特徴だ。
番組の歴史上、最大の出来事はスポンサーの交代だ。
〇六年十二月、開始から単独で提供を続けてきたセイコーエプソンが「プロモーション戦略の見直しの一環」を理由に降板した。
一社提供の場合、その企業が降りれば番組の存続自体が危うくなる。しかし、番組はコンセプトも構成も変わることなく続いた。新スポンサーとなったキリンビールは「質の高さに定評があったから」と説明する。
優れた番組に贈られるギャラクシー賞の特別賞など、複数の受賞歴を持つ番組だが、視聴率は、上向いたとはいえ最高でも6%台。テレビ事情に詳しいオフィスN代表の西正さんは「当初から、視聴率より視聴質を優先していた。視聴率のため各局似たような番組を並べる中、見るものがないと嘆く大人のニーズに淡々と応えてきたことが良かった」と、荒波を乗り越えて回を重ねることができた理由を分析する。
貴重な美術品の撮影許可を取るのは時間がかかる。しかも、同じ作品を二度扱ったのは、総集編を除けば、ピカソの「ゲルニカ」だけ。毎回違うネタを探すスタッフは大変だが、当初から携わる制作会社・日経映像の栗本宏制作本部長は言う。「普通に連想する名作とは違う作品を発掘するのが醍醐味(だいごみ)。視聴者も、次にどんな作品が出てくるのか、楽しみにしているはず。それに応えていきたい」
四百回記念として、番組では五日と十二日に、日本の巨匠二人の作品を取り上げる。五日は横山大観の「夜桜」、十二日が東山魁夷の「残照」。放送はいずれも通常と同じ午後十時から。
出典:東京新聞