もっぱらのビール党とあって、愛知県清須市のキリンビール名古屋工場の見学ツアーに参加した。快いのどごしがたまらず愛飲しているビールは、思いのほか身近なところで造られていた。知識を得たお陰で、ますます飲む量が増えそうだ。
平日にもかかわらず、午後1時スタートの組には家族連れやカップルら約20人が参加した。「ビール好きか、宴席を盛り上げるのが得意なのがガイドの資格です」。愉快に自己紹介したガイド歴4年目の前美由紀さん(23)が案内してくれた。
出発を前に、前さんの滑らかな口調で施設の概要説明が始まる。工場は1962年創業で、敷地はナゴヤドームの5・5倍にあたる約26万平方メートル。生産商品はビールと発泡酒などの酒類合わせて10種類で、その量は年間に350ミリリットル缶換算で約11億本分に上る。子供たちから「へえー」と驚きの声があがった。
この後、3階のプロジェクターの映像でビールの製造工程を予習した。
(1)大麦に水を含ませて発芽させ、麦芽(モルト)をこしらえる(2)麦芽のでんぷん質を糖分に分解し、できた「もろみ」をろ過して「麦汁」に。ホップを加えて煮沸し、独特の香りと苦みを引き出す(3)麦汁に酵母を加えて低温発酵させると糖分がアルコールと炭酸ガスに分解され、約1週間で若いビールになる(4)これを約0度でじっくり貯蔵すると、調和のとれた風味と香りが生まれる(5)熟成したビールから酵母やたんぱく質を取り除くと、透き通った琥珀(こはく)色のビールの出来上がりだ。
基礎を学んだ後、いよいよ製造工程に沿って歩く。途中には、ホップの香りをかいだり麦汁を試飲したりするコーナーなどがあり、なかなか興味深い。最大で高さ約23メートル、直径約8メートルもある発酵タンクや貯蔵タンクが屋外に林立する光景は壮観だ。瓶や缶に詰めるラインが流れる速さにも驚かされる。
1時間のツアーの最後には試飲コーナーがあり、参加者はビールやジュースを味わった。愛知県春日井市から両親と訪れた9歳の三つ子の姉妹、松本采香(あやか)さん、朋香(ともか)さん、侑香(ゆうか)さんはメモを取りながら熱心に見学した。父の冨士夫さん(44)以上のビール好きという母の美香さん(42)が出来たてのビールを飲む姿を眺めていた朋香さんは「おいしそう。早く大人になって飲んでみたいな」。私も美香さんの飲みっぷりを見ながら、マイカーで訪れてしまった自らのやぼを悔やんだ。
出典:毎日新聞